「お前、なんでここに・・・」
「おれに不可能はないんだよ」
 驚いた様子のシシドに近づいて、そのまま両腕を投げ出した。
「何だよ」
「あのとき、あのウスってやつがやったみたいにおれのこと抱えてみろよ」
「・・・はあ?」
「ま、あんたは力なさそうだけどな。ひ弱そうだし。無理か?」
「お前なあ・・・・」
 シシドは深くため息をつくと立ち上がり、よ、と言っておれを抱き上げた。
「これで満足か?」
「・・・・」
 おれは何も言わずにシシドを睨んだ。
「・・・何怒ってんだよ」
「怒るに決まってんだろ」
「何で」
 くそ、むかつく。おれはいらいらしながら続けた。
「自分ばっかりやりたいことやって、さっさといなくなりやがって」
「・・・それは・・・」
「どっか行くんならひとこと言えよ!・・・あ、」
「?」

「・・・会いたかったんだからな!」

 シシドはすごくびっくりしたみたいに目を見開いた。
「・・・なんだよ!」
 こんなこと言ったことなかったから、おれの顔は赤くなってるのかもしれない。カッコ悪い、そう思っていると、シシドは可笑しそうに吹き出して、それから笑った。
「笑うな!」
「わ、悪い!」
 更にむかついていると、シシドはおれを抱えたまま、その腕でおれを強く抱きしめた。
「シシド・・・?」
「・・・その言葉が、聞きたかった」
 おれの肩に顔を伏せるようにして小さく言った。
「簡単だよな」
「・・・?」
「最初から、始めたらいいんだ」
 何のことかわからずにじっとしていると、シシドは顔を上げてにやっと笑った。
「よし。お前はこれからやることがたくさんあるぞ」
「あ?何だよ」
「まず身長を伸ばせ。そーだな、こうやって俺が抱えられなくなるくらいまでは。・・・ああ、俺よりデカくはならなくていいからな」
「デカくなるぜ。おれ、父さん189センチあるし」
「・・・・。ま、まあいい。あとはそうだな、テニス強くなれ。俺より強くなれよ」
「心配しなくても問題ねーよ」
 おれもにやっと笑った。
「すぐ強くなる。あんたよりもデカくなるしあんたよりずっとオトコマエになる。あんたより・・・たぶん頭はもういいだろうし」
「お前な!」
「他は?あとおれにどうしてほしい?」
 シシドの肩にかけた手に力を込めて尋ねると、シシドは笑った。

「そうだな。・・・じゃあ手始めに、お前の名前を聞いとこうか」

 おれも笑って、シシドの耳元に顔を寄せて、内緒話をするみたいに小さく言った。

「    」


H a p p y E N D .

これにておまけは終わりです。
お付きあいくださいましてありがとうございました!

Special Thanks to Shoko Kugami.
with love!

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