こいつはいつだって、おれにとっては突拍子もないことや信じられないことを、恥ずかしげもなくしたい時にする。
恥ずかしいって思うおれが子供だっていうんだろうか。
そう、例えばこんなふうに。
「ついてんぞ、ホラ」
シシドはそう言って、おれの口の端についていたクリームを指で丁寧に掬い取ると、そのまま自分の口に入れた。
「甘え。こんなもんよく食えるなお前」
「……何恥ずかしいことやってんだよ」
「あ?」
なんにもわかってないらしい。それとも、そんなことにイチイチ反応してるおれがやっぱり子供なのか。こいつはやっぱり、手のかかる子供を連れた母親かなんかみたいな気持ちでおれのことを見てるのか?
「なーにふくれてんだよ」
「別に」
「それとも直接舐めとってやったほうがよかったのか?」
「――バッ、」
「怒んな怒んな。赤くなってるぞ」
面白そうにおれを見て、シシドはにっと笑った。
「お前はホント、可愛いなあ」
「……バカにしてんのか」
おれは我慢できなくなって言った。
「は?」
「おれのことガキだと思ってバカにしてんのかよ」
シシドは不思議そうな顔をして、それから真面目な顔になって、優しく笑った。
「してねえよ。ガキだとも思ってねえ」
「じゃあ、」
「可愛いと思ったから言っただけ。お前のそういうとこ、俺は好きだぞ」
「す…!?」
「好きだよ、お前が」
こいつはいつだって、こんなふうにおれにとって突拍子もないことや信じられないことを、恥ずかしげもなくしたい時にする。言いたいときに言う。おれはそのたびにひとりで怒ったり、焦ったり赤くなったりする。何でなんだよ。
「……なんでそういうこと言うんだよ」
「言っちゃいけないことなのか?」
「だって」
「―――言いたいと思ったら言う。言えずに後悔するより、ずっといい」
「……」
「言ってればよかったって後で思うのは、もう嫌だからな」
「……シシド」
「だから文句は言わせねえぞ」
にや、と笑ってシシドは食べかけのパフェをおれの手からさらった。
「まだ食ってんだろ!」
「こんなもん食うよりもっと栄養あるもん食え」
「はあ?」
「で、早く大きくなれよ。待ってんだからな」
「…何を?」
「秘密」
「おれのこと太らせて食う気じゃねえだろうな」
おれが睨むと、シシドはいたずらっぽく笑った。
「まあ、そんなとこだ」
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WEB拍手おまけでした。おまけ時のコメントをそのまま載せてみます。
跡宍です。(跡宍長編「ぜんぶ、きみだった」の番外編を読んでくださいね!)10歳×25歳、あはは!
宍戸さんはあと5年くらいは待ちます。
だって今度こそ、跡部にしっかり抱きしめてもらいたいから。
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