神様も知らない午後

「そいつは、あんたの友達?」
「んー、友達っていえば友達だけど。まあでも結局は友達・・・だったのかな」
「何だよそれ」
 シシドは笑うだけだ。
「どんな奴だったの?」
「最高に性格が悪い奴。たぶんさっきの奴らに聞いたら、みんなそう言うと思うぜ」
 今のお前みたいにな。言ってまた笑うシシドにムッとしていると、シシドは俺の隣に座った。テニスバッグを開いて、ラケットやボールを取り出す。
「・・・テニスがめちゃくちゃ上手くて」
 おれが隣を見ると、シシドは手を止めてじっと手にしたボールを見ていた。
「上手くて?」
「俺が、死ぬほど憧れた奴」
「・・・・」
「それから、たぶん・・・たぶんもうこれから先、そいつ以上に誰かを好きになることなんかないだろーなって思うくらい、好きだった奴」
 シシドの手から、ボールが転がり落ちた。
 おれはベンチから立ち上がって転がっていったそれを拾い上げた。
「ほら」
 びっくりしたみたいに、シシドは顔を上げた。その手のひらにボールを乗せる。触れ合った指先がちょっとだけ冷たかった。
 あれ、何だろう。また、へんな感じ。
「シシド」
 おれは少し首を傾げて尋ねた。
「もしかして、おれ前にあんたに会ったことある?」
「・・・・・、」
 シシドはそのまま、おれの手首をつかんだ。


実はこのシーンは、完全に祥子さんのイラスト先行でした。
番外編でその後を書いている、とお話して冒頭を読んでいただいた頃にもらってしまって。
最初25歳宍戸さんは長髪だったのですが、このイラストを拝見してその設定やめました(笑)。
大人な宍戸さんがえっらいカッコよくって・・・!!

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