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結局おれたちは、テニスをしなかった。
――もっと強くなったらな。
おれを家まで送ってくれたあと、シシドはそう言って笑った。
それきりだった。
「やめた?」
「宍戸コーチだろう?うん、この間ね、急に連絡があって。理由とかは教えてくれなかったんだけど……」
引き止めたんだけどねえ、とスクールの校長は困ったように言った。
おれは拳を握りしめた。
「……上等じゃねえか」
何だよあいつ。
勝手にひとのこと連れ出して、勝手に友達とかに合わせて、勝手にキスをして、勝手に抱きしめて、勝手に泣いて、勝手におれを誰かの代わりにして。
そっちがその気なら。
(じゃあ今度は、おれが追いかけてやる)
おれが誰に似ていようと関係ない。おれに似ているそいつが、シシドにとってどういうやつだったかなんてどうでもいい。始める前から負けると決める勝負なんておれは嫌いだ。
死ぬほど憧れただって?
そいつ以上に誰かを好きにはならないだって?
――もっと強くなったらな。
すぐに強くなってやるよ。
その発言、おれが後悔させてやる!
あの日シシドがおれの手に残していったテニスボールを強く握りしめて、おれはそう、心に決めた。
神 様 も 知 ら な い 午 後 / E N D