それは とおいとおい どこかのせかいの おはなし。

 

 

寒い寒いある冬の日。
いたずらばかりしていた天使の赤也は、神様の怒りを買って天上界から氷の国へと追放されてしまいました。
「やっちゃいけないことばっかで天使なんかつまんねえ」
「あーあ、俺生まれるとこ間違ったかなあ」
「いっそ悪魔に生まれりゃよかった」

「なれないこともないんだよ、お前が望むなら」
そこに現れたのは、氷の国の管理人・幸村でした。
「お前は、新しい堕天使だね」
「そうだけど……」
「悪魔にしてあげようか?」

 

  「ほら」
幸村が呪文を唱えると、赤也の背の白い翼は消え、かわりに悪魔の羽としっぱが現れました。
「わあ!ありがとッス!」
「でもその姿は仮の姿。お前はこれから俺が言う課題を果たさなきゃ本当の悪魔にはなれない。それどころか失敗したらお前は、地獄の業火に焼かれて消えてしまうんだ。それでもいい?今なら引き返せるよ」
「勉強以外なら何でもやるッス!何すかその課題って?」
「これから人間界に降りて一番最初に出会った人間を、もっとも不幸な人間として地獄に引きずり落とすこと」
「……そんなの簡単ッスよ!」

 

 

「じゃあいっておいで。ただし、見張りをつけておくからね。仁王、いい?」
幸村が呼んだのは、銀色の髪をした火の魔人・仁王。
「じゃあいつものとおり。この子が失敗したら、きみの力でこの子を炎に包んでね」
「まかせんしゃい。さあ赤也、お前さんの力のみせどころじゃ」
「わかってますって!チャッチャッといきましょ!」

そうして人間界に降りたふたりは、ターゲットを決めるために物陰から様子を伺います。
そこに通りかかったのは、

 

  ひとりの人間でした。

 

top/next