それは とおいとおい どこかのせかいの おはなし。
寒い寒いある冬の日。 「なれないこともないんだよ、お前が望むなら」 |
「ほら」 幸村が呪文を唱えると、赤也の背の白い翼は消え、かわりに悪魔の羽としっぱが現れました。 「わあ!ありがとッス!」 「でもその姿は仮の姿。お前はこれから俺が言う課題を果たさなきゃ本当の悪魔にはなれない。それどころか失敗したらお前は、地獄の業火に焼かれて消えてしまうんだ。それでもいい?今なら引き返せるよ」 「勉強以外なら何でもやるッス!何すかその課題って?」 「これから人間界に降りて一番最初に出会った人間を、もっとも不幸な人間として地獄に引きずり落とすこと」 「……そんなの簡単ッスよ!」 |
「じゃあいっておいで。ただし、見張りをつけておくからね。仁王、いい?」 そうして人間界に降りたふたりは、ターゲットを決めるために物陰から様子を伺います。 |
ひとりの人間でした。 |